先日、Stripeのコミュニティイベント「JP_Stripes Connect 2025」に参加してきました。
決済プラットフォームとしてのStripeは使っているものの、コミュニティイベントに参加するのは初めて。
実際に参加してみて、技術的な学びはもちろん、コミュニティの熱量に圧倒された一日となりました。
このレポートでは、特に印象的だったものをピックアップして共有したいと思います。
参加動機
今回このイベントに参加しようと思ったのは、いくつかの課題と知りたいことがあったからです。
- Stripeの最新機能を知りたかった:Stripeの最新機能や今後どのような方向で動いているのか
- 3Dセキュアの謎を解決したかった:Stripeで3Dセキュアを実装したことがあるが、本番環境で3Dセキュアの認証画面が表示されないケースがあり、その理由がずっと気になっていた
- 銀行振込をStripeでやる意味:わざわざStripe経由で銀行振込を実装する意義を知りたい
- コンビニ決済のフロー:実装経験がないので、実際の導入事例を知りたい
- サブスクリプションサービスの導入事例:特にサブスク型ビジネスでの実装と運用のノウハウ
AIと決済の未来 – オープニングキーノート

Daniel Heffernanさんによるオープニングセッションでは、主にAIとStripeの関係について語られました。
まず驚いたのは、Stripeの昨年の取扱高が1.4兆ドル、世界のGDPの約1.3%に相当するというスケール感。そして、Forbes AI 50に選ばれた企業の78%、決済機能がある企業に限ると100%がStripeを導入しているという事実。
そして、特に印象的だったのは、エージェンティック・コマースの話です。
AIエージェント上で欲しいものを探して買い物が完結してしまうのか。凄いな。#JP_stripes pic.twitter.com/aos8inZwrr
— Toshi Seito@WordPressスピード解決屋さん (@TEDASK_Toshi) November 23, 2025
AIエージェントが、調べるだけでなく、購入者の代わりにアクション(購入)まで完結させるという話。そのための共通標準規格がACP(Agentic Commerce Protocol)で、StripeとOpenAIが協力して開発し、ChatGPTのインスタントチェックアウトに既に組み込まれているとのこと。
この話で興味深かったのは、この流れの中でECプラットフォームが果たす役割の変化です。
AIに情報提供と決済の仕組みを連携させる、いわばバックエンドとしての役割。
Shopify(海外版)では既に実装されているそうです。
会場からも質問が出ていましたが、「そうなってくるとECサイトの存在意義って…」という疑問は自分も考えさせられました。
ブランディングや顧客体験の場としてのECサイトは残るとしても、単なる商品カタログとしての機能は淘汰されていく可能性があると考えると、ECサイトの構築自体根幹から見直すことになりそうですね。
独自のECサイトだけだと、不利になりそうな感じが否めない。
— Toshi Seito@WordPressスピード解決屋さん (@TEDASK_Toshi) November 23, 2025
逆にいうと、AIエージェントに対応していたサービスの場合に、適切な提案ができれば販売チャンスが出てくるということでもあるかな。#JP_Stripes
RevOpsとコミュニティの力

今回のイベントのメインテーマの一つが「RevOps」でした。実は私、この言葉を聞いたのは初めて。Revenue Operations、つまり決済を実装するだけでなく、課金の仕組みや値付けを運用し続け、収益を上げ続ける仕組みを整えることだそうです。
実装して終わりではなく、その後の運用フェーズもしっかり面倒を見る。それが対クライアントさんだけでなく、自社サービスでも意外と疎かになっているという話しをきいて、BtoCで数多くのユーザーがいるようなサービスでは起こりがちな事なのかなと思いました。
特に印象に残ったのは、地方コミュニティの事例セッション。元北海道テレビの三浦さんのお話で、こんな名言が飛び出しました。
『コミュニティがないSaaSは使わない』は名言笑#JP_Stripes pic.twitter.com/fzBCNnRfA5
— Toshi Seito@WordPressスピード解決屋さん (@TEDASK_Toshi) November 23, 2025
これ、本当にその通りだと思います。特に技術的に複雑なプロダクトであればあるほど、困った時に相談できるコミュニティの存在は大きい。
顧客解像度を高めるRevOpsの実践

RevOpsの概念を聞いた後、株式会社Helpfeel 秋山さんとStudio, Inc 八木さんのパネルディスカッションでは、より具体的な実践事例が語られました。
Helpfeelさんは、私も普段利用しているGyazoを提供している会社です。Studio, Incさんは、言わずと知れたクラウド系のCMSのStudioを提供している会社です。
意外にもGyazoってユーザーの8割以上が北米市場らしいです。
個人的に最も印象に残ったのが、価格改定の話です。
両社とも値上げの経験があるそうですが、価格改定によってユーザーが大幅に減ることはなかったとのこと。
価格改定は「当然の価値提供」であるとして、堂々とコミュニケーションする方が、むしろ納得を得やすいという話でした。
値上げを躊躇して申し訳なさそうにするよりも、「これだけの価値を提供しているから、この価格です」と堂々と伝える。フリーランスとして価格設定に悩むことも多い立場からすると、なるほどなと思わされる話でした。
サブスクリプションサービスの実装と運用

今回、個人的に最も知りたかった内容の一つがこちら。アトモフ株式会社 中野さんと株式会社TBSテレビ 亀田さんのパネルディスカッションでした。
RevOpsの話しの流れで、月会費の料金の値上げについても話題になり、
サブスクリプション決済の実装における、データ管理のベストプラクティスについて語られた内容が特に印象的でした。
サブスク決済の場合、“個人情報などのセンシティブな情報はStripeに乗せてしまって、自社のデータベースには紐づいているIDだけ登録して、必要な時に取り出す。”
— Toshi Seito@WordPressスピード解決屋さん (@TEDASK_Toshi) November 23, 2025
これ確かにと思った。#JP_Stripes
これ、セキュリティの観点からも、システム設計の観点からも非常に理にかなっています。個人情報やカード情報といったセンシティブな情報を自社で持たないことで、セキュリティリスクを大幅に軽減できる。StripeのCustomer IDとサブスクリプションID1を保持して、必要な時にAPIで情報を取得する設計。
実装する側からすると、「データは手元に置いておきたい」という心理が働きがちですが、リスク管理の観点からはこの方式が正解だと実感しました。
また、運用上の落とし穴として、通貨エラーの話も興味深かったです。
ベータ版でゼロドル決済をしていたユーザーに、有料化の際に日本円の商品を紐付けたところ、通貨エラーが発生。夜間にサブスクリプションデータを円に作り直す対応が必要になったとか。実装時には気づきにくい、運用で初めて発覚する問題ですね。
飲食店×Stripe – リアルビジネスへの展開

コネクトとリアルビジネスのセッションでは、株式会社favyさんによる飲食店へのStripe導入事例が紹介されました。サブスクコーヒーなど、飲食店ならではのユースケース。
ここで学んだのは、リアルビジネス特有の複雑さ。例えば:
- 軽減税率の適用
- イートインとテイクアウトの税率の違い
- インボイス対応
- 決済手数料の会計処理
そして、Stripeでサブスクリプションサービスを実装する際の大きな注意点がUTCの問題です。
Stripeは全ての時刻をUTC(協定世界時)で管理しています。つまり、日本時間(JST)との間には9時間の時差があるということ。これが飲食店のようなリアルビジネスでは、意外と大きな問題になります。
具体的には:
- 日本時間の深夜に課金処理が走る場合、UTCでは前日扱いになってしまう
- サブスクコーヒーのような「購入直後から使える」「1日1杯」のサービスだと、顧客が期待するタイミングと実際の課金日がずれる
- これによって顧客体験に影響が出てしまう
デジタルコンテンツの販売とは違い、物理的な商品やサービス提供では「いつ」が非常に重要。UTCを意識した実装設計をしないと、こういった問題に直面します。このあたり、ドキュメントだけでは気づきにくい落とし穴だと実感しました。
3Dセキュアの謎、解決!
LTセッションで、私が抱えていた疑問が解決しました!
これ解決した。
— Toshi Seito@WordPressスピード解決屋さん (@TEDASK_Toshi) November 23, 2025
フリクションレス認証だったり、カード会社でコントロールしているそう。
つまり3Dセキュアの認証が出なくても対応されているということ。#JP_Stripes https://t.co/TMtDoR1Xml pic.twitter.com/4pHiFhOEUD
本番環境で3Dセキュアの認証画面が表示されないケースがあったのですが、これはフリクションレス認証という仕組みによるものだったんですね。
「Stripeの3Dセキュア対応は他社と比べてシンプルであり、特にStripeチェックアウトを利用すれば対応不要となる。サブスクリプションの場合、初回登録時に3Dセキュア認証を通せば、以降の決済で認証が求められることはほとんどない」とのこと。
簡単に言うと:
- 3Dセキュアは有効になっている
- ただし、リスク判定の結果、認証画面をスキップしている
- 判定はカード会社側でコントロールされている
- 認証画面が出なくても、セキュリティは担保されている
「3Dセキュアを実装したのに動いていない」と思っていたのは私の誤解で、実際にはバックグラウンドで適切に機能していたということ。この情報、同じ疑問を持っている開発者は多いんじゃないでしょうか。
懇親会の熱量
セッション終了後の懇親会も、このイベントの大きな魅力でした。
Tシャツ争奪戦の勝者🏅
— オジマヒデキ @ パラレルマーケター / CRO (@hide69oz) November 23, 2025
#JP_Stripes pic.twitter.com/H8R16HsOkV
Tシャツじゃんけんで勝ち残って、いただいちゃいました!
懇親会では、Stripeのボランティアメンバーの方や、Stripeの中の人から直接話を聞くことができました。特に印象的だったのは、非エンジニアの方にも丁寧にもコミュニティメンバーの方が本当に丁寧に答えているシーン。
外資系サービスのため、感覚的にコミュニケーションするのが遠い存在に感じるのですが、こういった場でフォローしてもらえるのは有りがたい事ですね。
まとめ
Stripeのコミュニティイベント、想像以上に実りのある時間でした。
技術的な学びはもちろんですが、それ以上に「コミュニティの力」を実感しました。
こういった情報は、やはり現場で実装している人たちとの交流の中で得られるのだなと改めて実感しました。
決済という、ビジネスの根幹に関わる機能だからこそ、困った時に相談できる場があることの価値はかなり大きいなと感じました。
以上、『JP_Stripes Connect 2025イベント参加レポート』でした!

